新型コロナウイルス感染症による「コロナ禍」は、本格的な流行から3年目を迎えた2022年現在も多くの人たちを苦しめています。

 直近では「第7波」が、夏休みシーズンを直撃しました。それにより閉店危機に瀕したのが、三重県伊勢市にある喫茶&模型工房「ホビーカフェ ガイア(以下、ガイア)」。「完全閉店」を視野に入れた店の切迫した状況をTwitterで発信し、注目を集めました。

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8月も残すところあと1週間となりました。
そんな中、ホビーカフェガイアは実のところ…
本年2月のコロナ第6波から現在まで、ご来客数の減少を食い止めることができないどころか、日に日に状況が厳しくなり。
そのため、大変お恥ずかしい話なのですが本年末での《完全閉店》を、現実的に検討する段階に入りました。

 店の現況を報告したのは、ガイアのホビーと厨房を担当する斉藤さん。

 2016年7月に、喫茶スペースと模型製作スペースが併設した店舗としてオープンしたのが「ホビーカフェ ガイア」。その運営にあたり、初期からこだわったのが「食」でした。


 「『レンチン』頼りのメニュー構成で食品提供する店が多かったので、ちゃんとしたものを出したいという思いがありました。その上で、模型スペースサポートにもしっかり回れるよう考慮した結果が『カレー』でした」


 「チキンカレー」と名付けられた一品は、鶏の骨が柔らかくなるほどに煮込み、独自ブレンドのスパイスと旨みが凝縮したこだわりの逸品。テイクアウトも可能なガイアの看板メニューとなりました。

 今では10以上のラインナップを取り揃えるまでになった「ガイアカレー」。さらに、どんぶり・軽食・スイーツなどもメニューにあり、モーニングやアフタヌーンセットも取り揃えていて、作業性重視と言いつつ、カフェとしても本格的なお店となっています。なお、喫茶とデザートについては、オーナー兼店長が担っています。


 模型工房コーナーに関しても、「三重県内初」の謳い文句とともに、エアブラシ超音波カッターなど、一般家庭では中々取り揃えれないものも含めて完備。地元伊勢在住のモデラー・伊藤霊一氏を招いての模型教室を招くなど精力的に活動。日本各地から“イセ界”への来訪者が多く存在しました。


 ちなみに、コーナーを設置するきっかけとなったのは、オーナーの息子にプラモデルの手ほどきをしたからでした。

■ 大きな岐路に直面した「コロナ3年目(2022年)」の「第7波」

 そんなガイアにも、コロナ禍の猛威が容赦なく振りかかりました。伊勢への観光客に比例するように来店客は激減します。それでも、行政のサポートなどで何とか踏ん張れたのが2020年2021年でした。

 しかし2022年に入っても状況はより深刻となり、年初の時点で斉藤さんとオーナーとで話し合いが行われ、「完全閉店」も含めた今後の方向性を確認していました。

 ガイアにおいての繁忙期は、お盆・ゴールデンウィーク・年末年始といった、多くの人たちが長期休暇に入る時期。国内屈指の観光地・伊勢に店を構え、日本各地から来客者がいるという点が理由のひとつですが、ここで追い打ちとなったのが「第7波」でした。

 7月から8月にかけて発生した「流行」は、夏休みシーズンを直撃。とはいえ、前2年と比べると多くの人々の外出は増加としていましたが、ガイアには客足が遠ざかる影響を受け、6月と合わせた3か月分の売上が非常に厳しい見通しになることに。そのタイミング8月24日)で発信したのが今回の投稿でした。

■ 一縷の望みをかけた結果

 ただ、今回ガイアが発信した内容は、「閉店のお知らせ」ではなく、近い将来そうなる可能性が高いという「予告」でした。

「当店店長とわたくし話し合い、来月9月1か月間の数字次第で、最終判断を下す事となりました。
もちろん、仮に9月の状況が大きく好転したとしても、それが10月以後も継続するとは限りませんし、むしろその可能性は低いでしょう。ですがギリギリの一縷の望みをかけて、というところでございます」

「6~8月の営業結果の平均値と9月の営業結果、この2つの中間値が「当面、営業継続できる水準」かどうかで判断することになります。かなりヘヴィな状況ですが、お越しくださいました皆様には、おいしさも、模型作りのノウハウも、これまでと変わらずご提供し続けてまいる所存です。恥を忍んで、皆様にお願い申し上げます」

 斉藤さんは、Twitterで状況を発信する前に、「まずは目の前にある『事実』を伝えるべきだろうと」と考えていたそうです。ある日突然、閉店のお知らせをする、というよりは、「猶予期間」を作りたかったといいます。

■ 反響の先にあったもの

 「元々『コロナがおさまったら行きますよ!』という声は多かったんです」

 店が発した告知には、ガイアを愛するユーザーをはじめ、人気声優の関智一氏などが反応。そして「拡散」という名の支援の輪が広がり、応援する人たちが一人、二人と再び集まってくるようになりました。時には、名物のカレーなどが欠品するほどだといいます。

 「本当に厳しいのが伝わったみたいで」と、以前の繁忙期に匹敵するような来店客を誘発することになり、売上を大きく伸長させました。

 しかし、一連の反響は、ある程度織り込み済みのものでもありました。のべ3年にわたる危機において、8月最終1週間の盛況では「一時しのぎ」に過ぎません。引き続き予断を許さない状況には変わりないのです。

 一方、ガイアに「殺到」したのは他にも存在しました。

 「いくつかコラボの話をいただきまして。それも実現していけば、来年以降も存続出来るかもしれません」

 その言葉通り、9月4日には、静岡県静岡市にあるケーキ屋「ショコラファン」による焼き菓子の出張販売が、10日には、東京都にある工具メーカーアルゴファイル」社長による実演即売会が実施されました。

 もともと先の伊藤霊一氏の模型教室など、イベントを積極的に開催していたというガイア。来客増に加えて、イベントの本格再開も視野に入ってきたそうです。

 とはいえ、引き続き予断を許さない状況。まずは9月の売上実績を見て、年内そして2023年以降の在り方を判断することには変わりないとのことです。

■ 客側がしてほしいこと、店側ができること

 今回のケースガイアに限った話ではありません。しかし大きく違ったのは、店側が事前に「SOS」を発したことでした。

 斉藤さんが話した通り、今回ガイアは全てを白日の下に晒すことで、「閉店危機」の回避を試みました。その結果、完全に危機を脱したわけではありませんが、店側の「アクション」に対し、客側そして投稿を見た第三者の「リアクション」により大きな「変化」を生じさせました。これは普段より、SNS発信を積極的に行っているような店舗にひとつのヒントを示しているといえます。

 コロナ禍において、店側が発信する「重大なお知らせ」というのは、「閉店告知」に直結しているのは非常に多く見られるケースです。

 それは、ひょっとしたら斉藤さんが発した「美学」がそうさせているのかもしれませんが、店を愛していた客側からすればたまったものではありません。いざ「閉店」となると、精々出来ることと言えば、名残惜しみつつ「最後の奉公」とばかりに来店するくらいです。

 これがもし、今回のガイアのように「アクション」を起こせば、それにより支援の方法の選択肢が複数生まれます。先述の来客増にコラボの申し出、そして本稿のように記事での紹介など、様々な可能性が生まれていきます。それにより「未来」が変わるかもしれません。しかし事前に確定してしまっていると、客も身動きが取れないのです。「滅びの美学」は、ただただ困惑するだけです。

 反面、「コロナ禍がおさまれば……」と、客側が過度に控えている深層心理が依然働いている点も留意すべき点です。

 これは決して間違った考えではありませんが、現在は十分な感染対策を行えば外出ができる環境下にあります。筆者はスポーツ観戦を趣味としていますが、一部の試合では「声出し」も解禁されるようになり、ゆっくりとですが「日常」に戻りつつあるように実感します。様々な媒体で「配信」がされるようになった昨今ですが、やはりスポーツというものは現地で見たいもの。チケット代や飲食代などにお金を落とすことで、「支援」にも繋がります。

 それはお店でも同様のことが言えます。

 ガイアの場合だと、「看板メニューカレーペーストの通販をすればいいのでは?」という声もありました。実際にガイアでは、以前実施していたことがありますが、それは「まん防まん延防止等重点措置)」などが発令された際の応急措置。営業自体は可能になっている現状だと、それに割くのは店のオペレーションとして難しくあります。

 「それにライスチキンがある『カレーライス』と、ただの『ペースト』じゃ商品価値が全く違いますレトルトに出来ないか一度相談したこともありましたが、それも難しかったですね」

 3年にも及ぶコロナ禍は、数多の人たちを疲弊させました。不安定な世界情勢で、物価の上昇も止まりません。コロナ以外の「リスク」も高まっています。経済的理由で中々身動きしにくい人も多いかと思います。

 しかしそんな中でも、声をあげないと「変化」は起こり得ないのです。

 あなたの「推し」はまだ存在していますか?



<取材協力>
ホビーカフェ ガイア(@hobby_cafe_GAIA
三重県伊勢市御薗町高向2042-1

(向山純平)

三重県伊勢市の模型店「ホビーカフェ ガイア」の緊急告知に反響 かっこいい散り際よりも「ギリギリまで踏ん張りたい」


(出典 news.nicovideo.jp)

できることなら頑張ってほしいです。

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